拝啓、TとR

 ゴールデンウィークの休日希望アンケート(2日or6日)が直前になって回覧され、アンケート作成者の特権で、いち早く2日を休日希望で申請したのは、2日の晩より出発する九州旅行に備え体力を温存したかった為だ。

 今、担当している商品は営業マン一人、事務員一人という二人体制で日々の業務をこなしている為、同じ日に二人同時に休むということは常識的に考えてあり得なかった。

 得意先訪問の為、外出をしていると事務所から携帯に電話が鳴った。事務員からだ。アンケート用紙が手元に届いたらしい。「6日は忙しくなると思うので6日を休まれたらどうですか?」という内容の電話だったと記憶している。


              ここから二人の駆け引きは始まった。


 心優しい事務員は忙しい6日に出勤するのでは無く、暇な2日に出勤されたらどうですか、忙しい6日は私が出勤しますよアピールを猛烈に仕掛けてくる。が、2日より6日が忙しくなる理由などどこにもなかった。事務員は6日が忙しいということを名目に、2日を休もうという、あわよくば何て優しい事務員だと思わせる高度なテクニックで僕を2日に出勤させようとしてきた。

 ジェントルメンな僕は「忙しい6日に○○さんに出勤してもらうのは忍びない。僕が出ますよ。」と、反撃の余地すら与えない必殺のカウンターで反撃した。

 ここで勝負(休み)は決まるはずだったのだが、しかし、But、事務員は禁じ手ともいうべき、秘策、「アナタ、ハッチュウニュウリョクデキナイデショウ。」を唱えた。

 そう、受発注入力業務は事務員が行うという会社の基本スタイルを忠実に守っていた僕は打つ手が無くそこで、ゲームオーバーだった。降参を意味する「○○さんの好きな方を休んで下さい。レディーファーストです。」と最後の気力を振り絞り、ジェントルマンに決めた。
 
あぁ、T田、R也よジェントルメンなおいらを許しておくれよ。

                                                   敬具